台湾を「線」で旅すると、新しいものが見えてくる─淡蘭古道と山海圳国家グリーンウェイ、2つのトレイル(自然文化歩道)

日本でも幅広い世代に広がり、近年その人口が増加傾向にあるトレイル文化。山を走るトレイルランナーから、自然をゆっくり歩くハイカーまで、楽しみ方は多様化しています。
台湾各地には、整備されたトレイル(自然文化歩道)が点在し、詳しいルートを紹介する日本語版を設けているサイトや体験記を目にすることも少なくありません。
台湾を代表する二つの自然文化歩道である「淡蘭古道」と「山海圳国家グリーンウェイ(山海圳国家緑道)」をご紹介します。

淡蘭古道は、清朝時代に淡水(現在の台北周辺)と噶瑪蘭(宜蘭)を結んでいた交通路をもとにした古道。かつては人や物が行き交い、茶や生活用品などの物資がこの道を通って運ばれていました。
現在の淡蘭古道は、北路・中路・南路といった複数のルートに分かれており、都市の近くから山あいまで、さまざまな景色を楽しむことができます。
石畳や古い階段、集落跡などが残り、道そのものから歴史を感じられる点が大きな特徴です。
また、現在利用されている淡蘭古道の多くは、行政と地域の人々が協力し、石をひとつひとつ運び、昔ながらの手作業で整えながら修復してきたもので、昔の人の往来を伝える道に今の人の手が加わり、時間を越えて使われ続けている──その歴史のつながりを感じながら歩ける点も、淡蘭古道ならではの魅力です。

▼東北角及宜蘭海岸国家風景区
淡蘭古道(日本語): 淡蘭古道のルートや歴史、人文・観光情報を紹介
https://danlantrail.necoast-nsa.gov.tw/Index.aspx?l=3

台湾には「山海圳(さんかいしん)」というロングトレイルがあります。海抜0mの台湾海峡からスタートし、嘉南平原を抜け、最終的には標高2,000m級の阿里山へ海から阿里山へ一本の道でつなぐ、台湾版カミーノとも言える約177kmのロングトレイルルートです。海から山へと伸びるこの道は、距離をつなぐだけでなく、水の流れや土地の成り立ちを意識して整備されています。海岸の湿地、農村、用水路、平野、そして山へ。歩いて進むにつれ、台湾の風土が連続的に変わっていく様子を体感できます。
山海圳(さんかいしん)国家グリーンウェイは、徒歩だけでなく、自転車や公共交通と組み合わせて体験できる点も特徴です。すべての距離を歩き通さなくても、旅の予定に合わせてアプローチの方法が選べるため、一般の旅行者にも取り入れやすいトレイルルートになっています。

▼台湾農業部林業及自然保育署
山海圳国家グリーンウェイ(日本語)
https://recreation.forest.gov.tw/jp/Topic/MSTW

台湾千里步道協会(Taiwan Thousand Miles Trail Association)は、台湾におけるトレイル(自然報道)の文化を国内外へと広げるため、台湾各地の長距離トレイルルートの保全や普及に取り組むと同時に、アジア各地の関係者が集うトレイル関連の国際会議にも参加するなど、海外のトレイル団体との交流も積極的に行っています。
日本の宮城県で展開する「宮城オルレ」の各コースは、淡蘭古道や台北近郊のルートと友好トレイルとして連携しています。現地には相互の関係を示す標識も設置されており、実際に人が行き来し、同じ「歩く文化」を共有する形での交流が続いています。
交流の輪はさらに広がりつつあり、昨年には静岡県富士市との連携も始まりました。山海圳国家グリーンウェイを軸に、日本側の富士山麓の地域と意見交換を行い、玉山と富士山という、それぞれの国を象徴する山をテーマにした共同の取り組みが模索されています。
特徴的なのは、その交流が「登頂」を目的としない点です。山の頂を目指すのではなく、麓や周辺を歩き、自然や人の営みを感じる「不登頂」という考え方を共有しながら、持続可能な旅の形を探っています。
山を征服する対象ではなく、生活や文化の背景として捉え直す視点が、台湾と日本のあいだで少しずつ育まれています。

淡蘭古道が、人の行き来や長い時間の積み重なりを足元から感じさせてくれる道だとすれば、山海圳国家グリーンウェイは、水の流れや土地の広がりを一本の線としてたどらせてくれる道です。
観光地を点で巡る旅では気づきにくい、土地どうしのつながりや背景が、「歩く」ことで自然と見えてきます。台湾にあるたくさんの「トレイル(自然文化歩道)」に歩みを進めれば、台湾という場所を、点から線へ、そして物語としてとらえるきっかけを得られるかもしれません。
春節(旧暦のお正月)が過ぎ、台湾はひと足早く春爛漫の季節を迎えます。やわらかな光と新緑に包まれる気候のもと、歩く旅には最適な季節の始まりです。海から山へ、歴史から暮らしへ。春の台湾で、トレイルというもう一つの旅のかたちを体験してみませんか。

▼台湾千里步道協会公式サイト(中国語/英語)
https://www.tmitrail.org.tw
台湾の步道・トレイル文化推進団体公式サイト